2つ前の「大手一般印刷所で二次同人誌は創れない?」において、妙な解釈をしてる人がいるなあと、Twitterを回って感じております。

とりあえず、創ることは可能だよ!って記事であって、疑惑の人のあれこれはちょっと棚においた(その代わり、その人に対する周囲の反応は騒ぎ過ぎだ!と感じた)んであって、いい悪いは判断したつもりじゃなかったんだけどなあ。


で、そもそもの問題になった花売り本の件は本人が釈明しますと言ってるのでそれを待つとして。

このケースとは別に、企業出資で問題になるケースのお話。
話を聞く限り、花売り本はこれとは違うやり方だと思うのです。そこだけは切り分けてくださいと前置きの上。

 

同人誌を作りたい、でも印刷のお金がない!って人はいます。
お金があっても、誰かがそのお金肩代わりしてくれる!って言ったら喜ぶ書き手はいます。
そこに漬け込んだ悪事ってのがありまして。

「漫画書いてよ!原稿くれたら印刷代はこっち持ちで、後はこっちで売ってくるから!売れた分の何%かを印税って形で渡すよ!あと、そっちに何百冊か送るよ!その分は個人通販かイベントでのみ販売してね!」

というもの。

一見悪そうな話には見えない。
が、これには落とし穴があって。
「あなたが出したいけどお金がないから頼んだ!ってことにしてね!うちが依頼したことは内緒ね!」
「書店委託はこっちでやるから、あなた側からやらないでね」
と書いてあったりする。
これが問題になっております。

これ、何かというと。
依頼した企業が勝手に(アマチュア)サークルをでっち上げ、そのサークル名で書店委託しちゃってるケースなのですわ。
前の記事の似たような案件については、実は書き手のサークル名で委託販売をしている(もしくは同人書店が同人書店名義で同人書店限定頒布でつくったもの)という前提だったので、「まあ昔からあるし……」という結論だったのですが。
同人とは無関係な企業が別サークル名でっち上げて、さも自分たちが作ったかのように装うと話は変わってくる。

まず、なんで企業が同人誌作っちゃいけないのか、企業が印刷費出資とかいけないのか。

……ごっちゃになってる人もいるんだけど、企業であっても、同人誌を作ってアマチュアとして発表していいのですよ。
例えば、印刷会社有志が集まって、自分の会社の印刷機使って印刷して、サークルで販売とか。
この場合は、集まってるのが企業つながりであっても、実際は自分たちが業務時間外に原稿を作成し、自分のお金を会社に収めて印刷したから、アマチュアイベント参加OKなのです。
プロ漫画家で個人事業主であっても、アマチュアイベント参加可能なのも同じような理屈です。仕事とは別に自分で作り、自分で金払って発注し、奥付という責任も(企業名があっても、個人の)自分たちになっているから。
つまり、お仕事として作るんじゃない=趣味というのが成立する故にOKなわけ。
(そうすると「お仕事絵をまとめた同人誌はどうなる?」とツッコミきそうだけど、この話については別の機会にした方がいいかな)

また、原稿を書いた人と、印刷代を払った人が別なのも、実は問題ありません。
というか、アンソロジーなんかだとそうなりがちなんじゃなかろうか。主催者が印刷費全額出す代わりに、売上は主催者が管理。他の参加者はできた本1冊プレゼントとか、数十冊くらい渡してその売上分が報酬(?)とか。
ただ、これも、主催者が「個人(プライベート)」のお金でやってるが前提だからOKなわけ。

この上げたケースの場合。
・企業が企業名で書き手に原稿依頼している(=お仕事依頼と見られてもしょうがない)
・書き手のサークル名じゃなく、出資企業がアマチュアサークルに見せかけた別サークル名で書店委託してる
・書き手はどこの書店に納品されたかしらない
・それどころか、何部印刷されたか知るすべもない(メールで届くらしいが、その数字が本当なのかの保証はない)
・この書店売上は、全て出資企業の口座に振り込まれ、出資企業の会計として計上される
・ということは、書き手が誰であれ、企業制作物と見られても仕方がない
ってところが問題になります。

で、だ。
会計上は企業の収支になるってケースは、プロ漫画家とかで個人事業主登録とかすると、同人誌でも有り得る話なんですよ。むしろ、個人事業主になってると、同人誌の収支を入れないだけで脱税扱いになって追徴課税発生するので、今後そういう方向を検討してる人は頭にいれておくといいと思う。
(個人事業主じゃなくても、同人誌収支がプラスになる人は確定申告した方がいい。殆どの人は収支で20万超えないと思うけど(超えてなければ申告だけで税金は払わなくて大丈夫)、微妙な程度に売上あったり、印刷部数多かったりする人は、ネ)

ただ、さっきのケースは【商業出版】と何が違うんだという話になりかねない方法なのです。
しかも、向こうから依頼してるのに、【うちが依頼したってこと内緒にしてね!】と言ってる時点で、向こうもダメなことしてるっていうのわかってるわけで。 
商業誌はアマチュアイベント頒布ダメだ!というルールを逸脱してしまうのです。 

もう一つの問題は、これ、本当に同人書店だけなの?という問題。
ヘタすると、変に複製されたり、表紙絵だけ勝手にグッズ加工されてUFOキャッチャーとかで販売されてたり、原稿データが海外のサーバで無断公開されてたり……という可能性があるわけ。
あんまり考えたくないけど、勝手に商業アンソロジーに掲載されて、それが問題になる可能性もある。
それで問題が起きた時、責任は誰が取るのか?と。
依頼した企業は【知りません!出したいって言われたのでお金だして売上の一部をもらうって契約しました!全部向こうの指示です!】 って言って逃げるのは目に見えてます。そして何も知らない書き手に責任が押し付けられると。 何も知らない!は通らない。多分こう言う可能性を考えてニセの契約書くらい作ってあるものです。というか、問題が起きたらそのくらいの偽造はやるわな。書き手(個人)が「そんなのもらってない!」といっても「なくしただけでしょ」でFAされます。

……まあ、たださ。

こう言う商売は昔からあって、余りおおっぴらに問題にならなかったのさ。
それがいいのか悪いのかは別だし、これを「昔からの慣習なんだからさあ……」という気はない。
同人誌も同人グッズも、特に大手なんかは制作費・印刷費だけでも桁違いのお金がかかるわけで、それをいっとき企業含めた誰かに借りるってのは有り得る話で、それを「企業出資!」とはいいたくないしねえ。
また、前回の話のとおり、自費出版形式を使うと、商業誌っぽい本を商業誌印刷会社でつくることは可能になる。これを「企業出資」とは呼びたくない(企業関わってるけどな)。
あと、特殊印刷とか、一部の特殊グッズとかは「そこの一般業者じゃないと創れない」ってことがあって、そういう作品作りの契約に企業名が登場することはありうるわけで、それまで「企業出資」とはいいたくないし。
(とはいえ、金とコネがあれば、大手・特殊な一般企業に同人グッズ依頼を個人ですることは可能だったりするんだけど)

なんだけど!

企業が責任のがれする形の、商業誌扱いされかねない本の制作出資話は気をつけようね!といいたいですわ。
こう言うの区別つきにくいし、わかった時にはもう手遅れ!ってケースも有るんだけどさ。
勉強代、というにはちょっと金銭面でも信用面でも大きすぎると思うんだ、ダメージが。
(わかってて頼んだ書き手についても、全面的に責める気はないのよね、私。 「彼らは被害者だ!悪いのは全部企業!」とはいいたくない)

この件の話ってのは、前々回のブログ記事に書いた件が問題になった時に「そういえば…」って上がってきて発覚して大事になってるんだけど。
前々回のブログに書いた花売りサークルさんの話とはちと状況が違う気がしてるんですよね。
このへんは、サークルさんが自ら釈明ページ作るって言ってるので、それを見てから判断でいいかなあと思ってます。
いやさ、M社協力でできた!と言いながら、T社専売ってのがすごく不思議なんでねえ。
(実はコンクール的な何かとか新人発掘プロジェクト的な何かがあったんじゃなかろうかとか、いろいろ妄想はしてるけど、今のところ妄想の域は出てないんでねえ)
(と書いといて、一緒のケースだったらどうしよう)