ネタについてのリクエストがあったので。
……といいつつ、希望にあった意見になっているかどうかはわかりませんが。

ニトロプラスというゲーム会社の著作物転載ガイドラインが同人活動を狭めている!と話題になり、しばらくして中の人が「そういう意図じゃなかった」と釈明し、今の「二次創作活動における同人誌等の活動に関する取り扱いについて」という形の文章(ガイドライン?)を出すことになりました。

この一連の流れ、ちょっと前にどっかで見たよなあ……と思ってたんですが、思い出したよ。
ユニクロのTシャツ作成アプリ(UTme!)の時の「著作権はすべてユニクロに引き渡すこと」と当初書かれていたあれそっくりなんだよね(この時も釈明が出て、創作物の著作権ではない」とかなんとか言われたような…)
(今あらためてUTme!の利用規約を確認してみたが、アニメなどのキャラクターや芸能人などのイラストについては投稿者が権利を持ってないとダメですよ!って書いてあるので、2次創作で1枚だけでいいから自分の絵でTシャツを…というのはやめたほうがいいのかもしれない。オリジナルならともかく)

というわけで、当初出されたガイドラインはそれはそれでネタになるのですが(1種200部が制限だ!っていうのは同人誌だと本当に一部の大手さんだけだろうしなあ)、さすがにそれはアレなので、今のガイドラインから読み解く、このニトロプラスの意図を考えてみたいと思います。

 


……どっちかというと、当初は「海賊版」を取り締まるのが目的であり、同人誌は考えてなかった…というか、当初から除外対象だったと思います。ただし、同人誌(=ファンアートによる冊子)は除外だけど、それを複製したり転売したりして儲ける業者は取り締まりたい。そいつらが「違いますよ、これ同人ですよ!」と逃げるのを防ぐ…結果が前の文章だったんじゃないかと思います。
そう考えると、こういう規約ってほんとうに難しいですよね。あるものを規制したいがために規約を作ると、守りたいものまで一緒くたに規制されてしまうことになるというのはありがちな話です。んでもって、そのへんをあいまいに書くと「逃げ道を作ってるような規約なのでしっかり明記してください」とツッコミがくる……っていうかツッコミが来てブチ切れたのが私の本業の方でありまして(同人関係ない)。くそ、あの役人め!(何かを思い出したらしい)

……閑話休題。
 
グッズ系は規制かかるよ!という話に同人誌制作側が過敏になってますが、このへんは私の前の記事の「当日版権システムはそんなに有能なの?」あたりも読んでいただきたいのですが(これ、ちょうど冬コミ前に書いた記事だな)、グッズ(ラミカポスカのような紙ものではなくフィギュアなどの立体物)についてはワンフェスのシステムを前提に考えている人が多く、またワンフェスで売られてるものを考えると、アマチュアと業者の区別がつかないからまとめて当日版権って形で審査するよ!ということっぽく。
つまり、いわゆる海賊版と、正規品と、同人グッズはぱっと見で見分けがつかないわけなんですよ、いわゆるグッズ系は。しかも、正規ライセンスを所有している隣でライセンスを持たない同人グッズや海賊版が売られてちゃ、こういう話になっても仕方ないよね!区別つかないもん、一般の人は!と思います。

同人誌は区別つくのか?と聞かれると、最近は公式で同人誌を作っていたりするのでなんとも言いがたいのですが、20世紀の頃は「海賊版同人誌」が結構おおっぴらに売られていたんですよ。複数サークルジャンル別々の本が1冊にまとまってるって形の冊子。こういうのを作って儲けていた人たちが誰かは知りませんが、まあ、さすがにあからさまな海賊版で、同人誌=ファンアートとは違うよねと思います。
こういう例はほぼ駆逐されたっぽく、今ではめったに見かけることはなくなりましたが、代わりにDL販売やWeb無断転載という形に変わり、今も「商売として同人誌を使う」業者は多々おります。
(当初のガイドラインに「電子書籍」の文字があったのも、こういったDL業者・Web無断転載の業者が頭にあったからだと推測してます)
こういう「商売として同人誌という形態を取るもの」と「ファンアートの結果としての同人誌」は似て非なるものなのですが、一般人に見分けが付くかというと非常に難しいというのが現状です。
現在のニトロプラスガイドラインにおいては
 同人誌等の活動における二次創作活動について、特殊な実態があることを鑑み、取引実態に即し、包括的に判断した上で、概ね過度な営利性がないものと判断しうるような事例については従来どおり、その活動についてファン活動の範囲内の行為として許容させていただければと思っております。
(「二次創作活動における同人誌等の活動に関する取り扱いについて」より引用)
となっております。

……まあ、過度な営利性ってどのくらいよ?とは議論の余地があるかとは思いますが、例えば【本200冊作ったら全部売れた!印刷費引いたら3万円残った!】を営利性があるかと言われると、微妙だよねっていう話だと思います。 (まあ経費って印刷費だけじゃないんだけどね)
この営利性の話って、「同人誌で黒字出すなんて、儲けてることになるからだめなんです!」といいつつ、買うのは大量印刷の大手さんのところというよくわからない理論も問題にしないといけなくなりそうな気がします。少なくとも、同人誌を有償頒布した金額から印刷費引いたら黒字が出た!だけでは営利性があると言い切るのは難しいと思います。 もう少し難しい話が待っている。
(個人的には、自分で作った同人誌が沢山の人に求められているからたくさん作ったはありだと思うのですが、それが二次創作だった場合、原作関係者がどう思うかはまた別だよねという話だと思ってます)

いわゆる同人書店での販売ってのも、利用している身とはいえ、【ファンアートが好きな人たちの集まりである同人誌】を【アマチュアの営利活動】と考えちゃう人がいるのもわかる気がします。
このへん、線引き難しいよなと思います。ってのは、同人書店に500部1000部とか卸していたら別なんだけど、大半の委託者は100部以下だと思ってるからです。……あ、うちの本も書店委託数は今まですべて2桁です。ぶっちゃけて言うと、書店委託で一番多かった委託数は、事実上書店限定頒布だった【歴史との比較論】という同人誌で、あれは100部印刷してとらのあな専売で75部委託で完売でした。(残りの25部+余誌は自分のスペースでたまに置いといたらすぐなくなった。未だにLTS(公共交通系オンリー)で10冊近く頒布されたのが疑問に思っている)(【歴史との比較論】という同人誌の内容は、DQ4に登場する武器やのりもの、建物などについて、史実に近いものは実際どうだったのか?という評論)
普段はこんなに取ってもらえませんし、そもそもたいてい完売せず返品されます。
(他に返品されず完売になったのは、書泉グランデさんとこのCHASE9(遠州鉄道研究&新高架完成レポート本)だけじゃないかなあ…あれはとらさんからは返品してもらってそれをグランデさんとこに追加納入した記憶がある) 

……やけに具体的に数字を出しているのは、この程度のレベルなんだよ自分はというアピールでもあります。ええ、書店においてもらうのは一種の宣伝であり、こんな本も作っているんだよ!という広告のつもりなので、別に売れなくて返送されても構わないのですが、それは私の考えであり、他の人がどう思ってるかは別でしょう。それは尊重しないといけないと思います。

また話がそれた。

ニトロプラスガイドラインはその辺同人誌について理解があり、でも、いわゆる海賊版的業者について排除したいという意志の現れだと思うのです。むしろ【同人誌は認めてるよ】的発言を公式が文章で出すって、ものすごくまれな行為だと思うのです(ニトロプラスの歴史を考えるとわからなくもないですが)。
他の出版社にしろゲーム業者にしろ、大抵は二次創作は著作権違反に当たります!みたいな表向きに文章を出しつつ、 運用としては黙認という感じなので。
(なので、「見本として同人誌送ってくれると嬉しいな」って書いてあるのを読んで私は盛大に吹いたんだけど、改定前から同人誌ほしい!って言ってたという情報を頂いたので、そういう会社なんですねと…)
ファンアートとしての同人誌・二次創作は海賊版にならないよ!っていう文章が「同人側」ではなく「原作側」から出されるって画期的なので、個人的には(黙認してるところなどが)こういう文章を作ってくれると安心できるよね!と思ったりはします。


……ただ。
逆に言うと、「ガイドラインがあるから安心して同人誌が創れます!」っていうのも、ちょっと変な話なのよね。そして、ガイドラインを作る原作側が増えるに従って、「2次創作してもいいですか?」って聞く人が増えるんじゃないかとちょっと心配になる人だったりします。いや、昔からいるんですけどね、公式にわざわざ「2次創作していいですか?」「同人誌作っていいですか?」って聞いちゃう人。基本的に、公式としたら「著作権違反に当たりますのでダメ」か「規約を読んでね」としか答えようがないと思うんだよね……。