売れるとは限らない。

技術書典に行かれた出版社の方がこんなことを呟いてたのですが。

個人経営の書店さんは、同人誌即売会に行ってみるべきです。
「この程度の冊子が、1,000円で売れるのか」とカルチャーショックを受けられます。
「取次から配本される本だけ売ってたら、もったいなくない?
売り場持ってるんだから、うちでも薄い本を作って売ろうかな」となるはずです。
#技術書典

https://twitter.com/mizno7/status/1117346175072423936?s=21


「この程度の冊子が」がどうしても引っかかるんですけど(いや、一応出版社の方でしょ?的に)、個人的には、個人経営の書店さんが同人誌即売会を見て参考になるかは割と懐疑的です。


カルチャーショックは受けると思うんですけどね。




まず、「この程度の冊子」は誰が作るのか

文面を読むと「個人経営の書店さんが自ら作る」みたいに読めてしまうのがものすごく不安なんですが…。もしそういう意味ならマジでオススメしない。
普通に考えて「すでに同人誌を作ってる人」、つまり個人と取引して置けばいい…って話だと思いたいんですが。

次、「置けば売れると思うな」。
これって「特定のジャンルだけを集めたイベントが東京で1日だけ開催されるから、それに日程を合わせてマニアがわんさかやってくる」わけで、書店のように「いつもある状態で売れるかどうかはなんとも言えない」と思うのよね。
あと、サークル(同人誌作ってる側)からすると「装丁やページ数が薄い本だからってワンサカ売れる人ばかりじゃない」「売れない本だって当然ある」という悲しい現実があるわけでして。売れる同人誌だけ置いたら、そりゃ売れる商業誌と同じでわんさか売れるでしょうが…ねえ。

さらに「個人書店に個々に取引させるのは大変じゃね?」
商業誌ってのは取次があって、そこが仲介してるから本の情報から仕入れから返品までできるわけだけど、同人誌って個人との1対1の契約だからねえ。手間もかかるし、値段付けどうするの?仕入れ値は?(1000円の本を1000円で仕入れても儲けがないのは当たり前、売上の3割もらいますとしてその本の価格はどうなるの?とかさ)みたいなのが起きるわけで。さらに仕入れたけど売れなかった本はどうするの?(割とある)とか、そこまで考えないと個人書店といえどおいそれと導入は難しい気がするのよね(やってるところは知ってるんだが)。

最後に「カルチャーショックは受けるだろうが、結局「東京だから」で終わらね?」
地方都市でもあるんですよ、いわゆるZINEや同人誌を集めたセレクトショップ的な書店。ただ、売れてるかどうかはその書店次第としか言いようがなく。その上、地方は物理的な人口が少ないから、その中のさらにニッチな本を求める人がどのくらいいて、さらにその中からお店に来て選んでくれる人がどのくらいいるのか…と考えると、「空き売り場を埋めるためなら別にいいだろうけど、すでにある店舗の売り上げ増につながるか」と軽々しくはいえないんじゃないかなあ…。

同人誌を書店に置いたらどうなるか?は「書泉グランデ(の鉄道や軍事などの専門書フロア)」とか「COMIC ZIN」あたりが割とモデルケースとしてわかりやすいと思うんですけど、あれも「東京だから」という点は否定できないし、大都市圏はまだ成立可能かもですけど、そうじゃない地方都市とかはどうなのかねえ…と思うのです。

商機だ!と思って始める人や店舗さんは止めない。実際、なんで出版不況と言われてるのにこんなに本が売れてるんだ!?ってカルチャーショックを受けるのは間違いないから。
ただ、そんなに美味しい話があるならもっとみんなやってるよねって話で、カルチャーショックの勢いでやる前に一呼吸おこうよとは思う地方在住者の意見であります。