さて、このnote話はそろそろおしまいにすべきだとは思う。こういう謝罪文も出ているし。



自分とて、おかしな評論文を書いたことなどひとつふたつはありますし、ここの書き方失敗したな、ここの視点は狭すぎだなと思うことだってたくさんあります。なので、正直、誹謗中傷的なところに対し謝罪を出したら、あとは中傷を受けた人が考えることだと思っています。

……なんだけど、なんか自分のブログに来る方々の雰囲気が、あんまりそれを望んでないんだよなーというのも感じます。なんというか、若者をこてんぱんにするBBA(私)が見たいというべきか。過激だな、この表現も。

というわけで、この文章が出た経緯などを自分で調べた上で、どうしたら良かったのかという話を。



別に「コミケは終わった」と表現してもいい

謝罪文で一番引っかかったのはここで、これを謝罪するのはちょっと違うんじゃないかなと思うのです。いや、この言葉で注目を集め、炎上する結果になったからと言うのはわかるのですが。

だってさ、作者は「ああ、コミケって終わったよなー」って思ったから、そういう言葉を使っているんでしょ?

そう感じるのは自由なので、そこの謝罪はいらなかったと思います。

「コミケは終わった」という最初の印象ありきで結論づけるからおかしくなる
 
で、自分のブログのRTや引用先つぶやきを時々眺めて気づいたんだが。
どうやら、評論というものは、最初のテーマ及び最初の仮説が正しいと結論されなければいけないと考えている人が一定数いるらしい。

ちょっと待ってくれ。
たしかに、自分の考えの正しさを証明する論文ってのもあるんだけど、自分の考えの正しさを証明しようとしたら全然違っていたよ!っていうタイプの論文もあるんですよ。
仮説は仮説。自分の考えは考え。で、調査は調査である。調査でも研究でも実験でもなんでも、調べてみたりやってみたりしたら仮説通りにならないことは結構あるものです。
その時に、何故仮説通りにならないのかを考え、次の研究(考察)につなげるのが、比較的まともな評論かなと感じています。もちろん、仮説通りの答えがバッチリ出たから怪しいって話ではないですよ。

仮説通りの答えが出なかったときに、仮説に当てはまるようにデータや研究結果を恣意的に取り扱うのが、駄目な研究であり論文です。

この文章は、【コミケが終わったという仮説を証明するための理由探し】の文でしかありません。それ自体は別にいいのですが、そのために調査内容と結論がちぐはぐになっている箇所が多数見受けられます。(とはいいつつも、あの調査したデータを見て、そう思ったんだもん!という可能性もあるので、そうなると分析力とバイアスの問題になってしまうんですよね…)

言葉の意味はちゃんと調べよう

私も正しく使えているとは言い切れないのですが……。
【同人ゴロ】とか【イナゴ】とか、その手の罵倒語を普段から使ってるんだろうなと感じています。そのようなレッテル貼りが当たり前の環境。筆者だけなのか、この団体さん全体がそうなのか、それともこれが今時の大学生の常識なのか、私にはわかりませんが。
こういう言葉、日常的に使っていても、「推敲」という手段を用いると割と消えるんですよ。つまり、このような罵倒語を使わず書いている論文書きが普段使ってる【可能性はあります】。使ってないかもしれませんが、そこを邪推するのは野暮でしょう。しかし、推敲していなかったとしても、推敲した上で残っていたにしても、それは【このような罵倒語は日常用語であり、取り扱いに注意しなくてもいい】と考えている証拠になってしまいます。
そんなさ、他人を罵倒しまくってる人の文章をさ、しかも言いがかりレベルで罵倒されているとかさ、他の箇所がどれだけ素晴らしくても、良い論文には思えないでしょ?
罵倒語に当たる言葉以外にも、女性向けと腐女子という言葉の範囲をちゃんと理解していないなと感じています。ここについては機械的に腐女子を女性向けと書き換えたがために、現在の文章のほうが酷い言い回しになってしまっている箇所がいくつかあります。文意によって言葉を使い分けないと駄目なんだよね。

締切が迫っていたかもしれません。推敲する時間はなかったかもしれません。
それでも、言葉の意味を正しく使い、ちょっとでも気になったら辞書などで正しい意味を調べる癖をつけたほうが、良い研究結果を良い印象で読んでもらえるようになりますよ。
私?国語辞典と英和辞典は流石にWeb辞書を使ってますが、それとは別にいいまわし辞典とか類語辞典とかはパソコンの横においてあったりします。暇になると本を読む感じで辞書を読むんですよ。面白いですよ、知らない言葉を知るってことは。

範囲は知ってるところだけ、狭くしたほうが炎上しにくい
今回「コミケ」がテーマなのですが、これもコミケの調査だけならそこまで炎上しなかったんじゃないかなと思うのです。もうちょっというと、「(筆者が思う)ニッチ系な同人誌」だけがテーマなら、じつはそこまでおかしなことはしていません。粒度が粗いと中編で書いてますが、それでもまあセーフなんじゃないかしら。
それなのに、ただネットで話題になったもののちゃんと調べていない赤ブーさんの名前を出してみたり、コミケvs女性向けオンリーにしてみたり。
(謝罪文読んでめっちゃ気になってるんだけど、作者の方は「男性向けが中心のオールジャンル即売会」の存在を知らない、の?関西在住ってXで言い訳してたけど、関西在住ならなおさら、こみっくトレジャーを見ておくといいよ!ちなみにこみっくトレジャーは男性向けオールジャンル即売会とされていますが、運営はCOMIC CITYやDozen Rose FESと同じ会社です)


ニッチ系の根拠が不明であったり、カタログ掲載の同人誌が新刊として出てると考えていたり(コミケに参加していると、サークルカットに書かれている興味深い本が出ていなかったり、逆に書かれていないお宝本が出ていたりするのはあるあるの話です。コミケの場合申込期間と参加日に隔たりがあるので余計にそうなりがちですが、これ自体はどの即売会であっても起こり得ます)。

無知なところを無理やり語っちゃってる感が強すぎるんですよね。

詳しくなれ、とは言わないです。詳しさという物差しは、めちゃめちゃ底なし沼だから。どこまで参加してもどこまで知識を仕入れても、パーフェクトに知ってる人間にはどうやってもなることはできません。
だからこそ、自分が知ってることだけを、自分が調子こいて発表できる範囲に明確に絞った上で、語ったほうがこの手の文章は賛意を得られます。
(文句が絶対にこないとは言わないけど)
コミケで男性向けしか見てなくて、なんか俺好みの好きジャンルでニッチな同人誌が減ったよなーコミケで買えなくなったよなーコミケも衰退したよなーと思うのならば。
  • 俺好みのニッチな同人誌とはどういうものか説明する
  • コミケで売られている(俺好みの)ニッチな同人誌を好きジャンルでのみ調査する
くらいに絞ったほうがいい。そのうえで、「俺の好みの同人誌が手に入らなくなったコミケは終わった!これからはオンリーイベントの時代だ!」という流れにすれば、ほら、女性向け/腐女子界隈の皆様も突撃してくることはないんですよ。単純計算で敵は半分に減るんですよ、やったね!

こんな場末のBBAの言葉など聞いてられないかと思います。若者というものはそういうものですし、それでいいと思います。
ただ、今後も同人界隈やジャンルの評論・研究をしていこうかなと思うのならば、このあたりを頭に入れておくと少しだけ楽になれると思いますよと。


最後に:「コミケは終わった」のか?濱澤論

これ、よく聞かれるんですけど、自分は「ただ単に波があるだけで、終わったわけでもなければ盛り上がっているわけでもない、その場に存在し続けるだけ」だと思うんですよね。
コミケ=コミックマーケットという【同人誌のお祭り】という意味では。

この手のオワコン論、大体が「特定ジャンルの本や人が減った=コミケが終わった」系ばかりで、個人的には食傷気味です。コロナ禍前はコミケ前後に山ほど見かけたので、今この手の文章が出てきたということは、コロナ禍における自粛が開けた!と思っている人が多いんだろうなあと感じています。


ちなみに、(男性向け女性向け一般向け問わず)特定ジャンルが終わったとか、同人誌そのものが終わったという話ならば、言わんとする事は分からなくはないと思っています。ぶっちゃけ、自分の妄想(そうだよ、妄想なんだよ同人誌って)を書いて発表するだけならば、ネット上のサイトやSNSなどだったあるし、その前はデジタルデータ化で紙同人誌は消えるとかって予想もあったもんね。今後はAIによって同人誌は駆逐されていく的な流れにもなるかもしれませんし、そういう意味では同人誌はオワコンかもしれません。私は紙の本が大好きだから、オワコンだったとしても紙の本を作り続けるわけですが。ただ、それは、コミケ(コミックマーケット)じゃなくてもいいかもしれません。実際に全国各地の同人誌即売会に参加しては、コミケにはない何かを探し続けていますし。

その上で、自分は。
「ありとあらゆる表現を受け入れていく」創作の多様性を拒否しない限り、コミックマーケットが終わることはないと思っています。
未来はわからんけどね。なんか事件が起こって、創作の多様性をあっさり否定する可能性だって無いわけじゃないので。その程度に未来はわからん。

「コミックマーケット」という場に参加するようになって20年以上、サークル参加/一般来場者の形で関わり続けてきた人間の、率直な感想はそんな感じです。